UCIロード世界選手権は順調に進行し、いよいよ大会前半のハイライトとなる男子エリート・個人タイムトライアルが開催されます。
数日前からまとめていた出場者一覧の更新を滞らせてしまっているうちに、タイムトライアルの出走者リストがUCIから発表されましたので、コース予習なども兼ねてアップしていきたいと思います。
観戦するにあたっての参考になりますと嬉しいです。
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UCIロード世界選手権・男子エリート 個人タイムトライアル(Heerlen~Valkenburg、45.7km)-9月19日
【過去5年の優勝者】
2011年 トニー・マルティン
2010年 ファビアン・カンチェラーラ
2009年 ファビアン・カンチェラーラ
2008年 ベルト・グラブシュ
2007年 ファビアン・カンチェラーラ
【コース分析】
距離こそ例年と大きな変動は無く45km強ではあるものの、3ヶ所の登坂区間がTTにおいては激坂と言えるレベル。
また、この3区間以外にも前半、中盤と上り基調のレイアウトが続き、純粋なTTスペシャリストには厳しいコースとなっています。
なお、3ヶ所の登坂区間は以下の通り。
1.Sint Remigiusstraat 1000m 7.7%
2.Rozekoel / Bundersberg 800m 5.4%
3.Cauberg 1200m 5.8%
男女ならびにカテゴリーによってコースが異なるため一概に同じくくりにはできないものの、上位に入る選手の傾向として前半から圧倒的なペースでゴールまで走り抜ける選手と、前半抑え目に入り後半からペースを上げて上位に食い込む選手に分かれている感じ。
特にこの男子エリートは45.7kmと距離が長いため、ペースの配分方法はタイプによってより鮮明になることでしょう。
一方で、共通する点として地脚の差がはっきりと出るコース設定であることを押さえておきたい。
大会初日のチームタイムトライアルで優勝チームと2位以下のチームとの差がくっきりと出た部分でもあります。
特に、40km以上をこなしてから最後に迎えるカウベルグの上り方1つで順位が変わってくるはず。
ただしTTTとは違い、各人に合ったペースを貫けるだけに、急坂で耐える走り方もあれば、逆に急坂で一気に差を広げるまたは縮めるといった走りをする選手などさまざまいることでしょう。
いずれにせよ、急坂をどうこなすか、前半から攻めるのか中盤から上げていくのかなど、走り方次第でリズムをつかめるか否かが大きく変わってくる難しいコースであることは間違いないでしょう。
前述したように、純粋なTTスペシャリストよりは登坂力を兼ね備える選手や、山岳ステージをこなした後に迎えるようなグランツールのTTステージに強さを発揮する選手が有利になるかもしれません。
【出場選手】
UCIから発表されたスタートリストをアップしておきます。
※時間は現地時間。日本時間は現地時間+7時間
注目選手の出走時間。
14:02 42 サム・ビューリー(ニュージーランド、オリカ・グリーンエッジ)
14:16 35 イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、モビスター)
14:18 34 レイナルド・ジャンセ・ヴァンレンスブルグ(南アフリカ、MTN・キューベッカ)
14:22 32 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
14:24 31 アレックス・ダウセット(イギリス、SKY)
14:26 30 アドリアーノ・マローリ(イタリア、ランプレ・ISD)
14:40 23 アンドリー・グリヴコ(ウクライナ、アスタナ)
14:42 22 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ)
14:50 18 クリストフ・ファンデワーレ(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ)
14:54 16 キャメロン・メイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
14:56 15 ジェシー・サージェント(ニュージーランド、レディオシャック・ニッサン)
14:58 14 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファルマ・クイックステップ)
15:00 13 グスタフ・ラーション(スウェーデン、ヴァカンソレイユ・DCM)
15:02 12 ヨナタン・カストロヴィエホ(スペイン、モビスター)
15:04 11 リューウェ・ウェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
15:06 10 ベルト・グラブシュ(ドイツ、オメガファルマ・クイックステップ) ←2008年チャンピオン
15:08 9 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
15:10 8 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファルマ・クイックステップ)
15:12 7 スヴェン・タフト(カナダ、オリカ・グリーンエッジ)
15:14 6 ティジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)
15:16 5 マルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)
15:18 4 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
15:20 3 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
15:22 2 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
15:24 1 トニー・マルティン(ドイツ、オメガファルマ・クイックステップ) ←ディフェンディングチャンピオン
ちょっと挙げ過ぎの感はありますが、優勝者はもとより、これらの選手たちが上位に顔を出してくるでしょう。
カンチェラーラ、ウィギンス、フルームといったTTスペシャリストは欠場。
彼らの不参加により、マルティンの2連覇がより現実味を帯びてきています。
今シーズンは昨年のように出場するTTほぼすべてモノにするほどの勢いはないものの、狙うべきレースに焦点を絞って調整してきている印象。
怪我やアクシデントが多かった中、6月末のドイツ選手権や8月のロンドンオリンピックで好リザルトをマークしているのはその表れか。
また、先日のTTTでもチームを牽引し金メダル獲得に大きく貢献。
調子を上げてきていることはもちろんのこと、今回のコースにあるような急坂は問題なくこなせるレベル。
そうした意味では、やはり優勝候補の一番手か。
マルティンの2連覇に待ったをかける存在として、大きな注目を集めるのがコンタドール。
8月の戦線復帰後、ブエルタ・ア・エスパーニャでの劇的な総合優勝があったとはいえ、出場レース数が少ないことから他選手とは逆に調子を上げてきている可能性は大いにあるでしょう。
ブエルタでも山岳ポイント込みのTTで好走し、今回のようなアップダウンが繰り返し訪れるようなコースは問題なし。
登坂力のある選手に優位に働くであろうこのコースで勝機は十分にあるでしょう。
できれば前半からマルティンより上位のラップで入りたい。
シーズン通してTTが好調のフィニーはロンドンオリンピックで4位入賞し、長距離TTへの適性をようやく発揮。
今大会の優勝候補に名乗りを上げています。
先日のTTTでは長時間牽引を担当し、最後のカウベルグで脱落しかける場面があったのは若干気がかり。
3ヶ所ある登坂区間、特に最終盤のカウベルグで持ちこたえられるかがポイント。
平地スピードは随一だけに、リズムに乗れればおもしろい存在。
ツール・ド・スイス、ブエルタ・ア・エスパーニャとビッグレースのTTステージを制したケシアコフも一躍優勝候補に。
純粋なTTだと分が悪いものの、登坂部分で差が付くようなコースを得意とするケシアコフには上位進出のチャンス。
ブエルタ同様、中盤から驚異的なペースアップに期待。
上りを含むコースだと強さを発揮しそうなのが、オールラウンダーとして一皮むけつつあるヴァンガーデレン。
今シーズンはUSチャンピオンシップTT2位、ステージレースのTTステージでも安定して上位に入っており、上位進出を期待しても良さそう。
難コースに強いピノッティや、今シーズンTT絶好調のシャヴァネル、3月のパリ~ニースでは最後の最後までウィギンスを苦しめたウェストラなども、上位に食い込むだけの力は大いにあるでしょう。
【優勝予想】
TT能力、今シーズンのTTリザルトのほか、個人的な希望的観測も込みで予想をすると、
★★★
トニー・マルティン
★★
アルベルト・コンタドール、フレデリック・ケシアコフ
★
マルコ・ピノッティ、ティジェイ・ヴァンガーデレン、テイラー・フィニー
と見ています。
マルティン以外に本来本命視されるであろう選手がいない分、マルティン一強もあれば、大混戦もあれば、思いがけないライダーが優勝をかっさらうこともあるかもしれない、非常に予想しにくい一戦と言えます。
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UCIオフィシャルサイト内世界選手権ページ
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UCIロード世界選手権オフィシャルサイト
UCIロード世界選手権-Review②(男子エリートTT、男子エリートTTT、戦評) « suke's cycling world
9月 21, 2012 @ 03:45:58