これまでUCIワールドツアー最終戦として、シーズンの締めくくりのレースの役割を担ってきたジロ・ディ・ロンバルディアは、9月最終土曜に移りました。
ブエルタ、世界選手権、そしてロンバルディアと、選手にとっても観る者にとっても慌ただしさを感じずにはいられない状況です。
しかし、今後は世界選手権を制したばかりの新チャンピオンをお披露目する場としての役割を果たすこととなるでしょう。
早速、今年のチャンピオンを披露する舞台として任務を行う“落ち葉のクラシック”を展望したいと思います。
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ジロ・ディ・ロンバルディア(ベルガモ~レッコ、251km)-9月29日
【過去5年の優勝者】
2011年 オリヴァー・ザウグ
2010年 フィリップ・ジルベール
2009年 フィリップ・ジルベール
2008年 ダミアーノ・クネゴ
2007年 ダミアーノ・クネゴ
【コース分析】
レース距離251kmの中で、主な登坂ポイントは5ヶ所。
90.5km地点が頂上となるVALICO DI VALCAVAは、最大勾配17%、登坂距離は約12km。
頂上で標高1336mとなる、さながらヒルクライム。
続いて、134.9kmが頂上となるCOLLE BRIANZAは、平均6.6%の上りを5kmほど。
そして今大会の目玉の1つと言える、COLMA DI SORMANOが続きます。
最も勾配のきつい部分は約2km。
平均勾配15.8%、最大で25%とも30%とも言われる強烈な上りを中盤にこなします。
レースが後半に差し掛かると、おなじみのMADONNA DEL GHISALLOが登場。
最大勾配14%の上りで、まずは1つ大きな動きがありそう。
最後は毎年決定的なアタックが生まれるVILLA VERGANO。
登坂距離3.3km、最大勾配15%のこの上りで勝負が決まる可能性も。
例年ギザッロで飛び出す選手が現れ、それを追うべくペースの上がる集団が徐々に人数を減らしながらヴェルガノを目指す、といった展開。
最後の難所、ヴェルガノからゴールまでは9.5kmと距離が短いこともあり、上りでアタックして飛び出した選手が逃げ切り、あるいは数人でゴールを目指しスプリント勝負となるのが近年のパターン。
今年も同様の流れとなりそうです。
ヴェルガノからゴールに向かっての下りで力を発揮するダウンヒラーにもチャンスあり。
終盤は道が狭く、イタリアレース特有のテクニカルなコースを味方に付けた選手が勝利をものにすることでしょう。
【注目選手】
出場予定選手の中から、押さえておきたい選手を独断でピックアップ。
スタートリストは添付の画像(公式発表分)、またはCycling Feverから。
オリヴァー・ザウグ(スイス、レディオシャック・ニッサン) ←ディフェンディングチャンピオン
ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)
リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル・ラモンディール)
フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカットリ・ベネズエラ)
アレクサンドル・ジェニエ(フランス、アルゴス・シマノ)
カルロス・アルベルト・ベタンクール(コロンビア、アックア・エ・サポーネ)
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) ←2001年チャンピオン
ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)
フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)
フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) ←2010,2011年チャンピオン
アレッサンドロ・バラン(イタリア、BMCレーシングチーム)
フレフ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
ジャンルカ・ブランビッラ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
ファビオ・デュアルテ(コロンビア、コロンビア・コルデポルテス)
サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)
ピエリック・フェドリゴ(フランス、FDJ・ビッグマット)
ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)
ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) ←2007,2008年チャンピオン
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD)
イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
モレノ・モゼール(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)
ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)
ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)
サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファルマ・クイックステップ)
バウク・モレッマ(オランダ、ラボバンク)
リゴベルト・ウラン(コロンビア、SKY)
ラース・ペーター・ノルドハウグ(ノルウェー、SKY)
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
パオロ・バイレッティ(イタリア、ウテンシルノルド・ナメド)
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
最大の注目は、やはりアルカンシェルお披露目となるジルベールでしょう。
ここ数年は、世界チャンピオンが“アルカンシェル興行”的な意味合いで出場するケースが多かったですが、ジルベールの場合はそういったことは無さそう。
このレースに合わせるために、直前のジロ・デル・ピエモンテを回避したほど。
圧倒的な強さで2連覇した2009,2010年の再現を狙います。
ほぼ確実にヴェルガノで動くことになるでしょうが、独走に持ち込もうとするのか、ライバルの動きを見ながら人数を絞ってゴール勝負に持っていくのかが焦点の1つ。
昨年のように、勝負どころで動けず後手に回ると厳しくなるだけに、確実に一撃でライバルを蹴散らす強さを見せたいところ。
ジルベールと並ぶ存在となるコンタドールは、意外にもロンバルディア初参戦。
下って、最後は平坦となる終盤のレイアウトはライバルに対して分が悪いとはいえ、直前のミラノ~トリノを制したことが却って予想を難しくしていると言えます。
ゴールスプリントでの勝ち目がほぼ無いことを考えると、ヴェルガノでライバルを引き離して逃げ切りを図ることになりそう。
ブエルタで大きく貢献したマイカらアシストは揃えており、上りでの集団コントロールでライバルの脚を消耗させようと企てることも考えられるでしょう。
同じスペイン勢では、ロドリゲスやS・サンチェスも有力。
ともにロンバルディアでの表彰台経験があり、戦い方は心得ていると言えます。
この2人も最低限、ヴェルガノで少人数に絞って最終局面を迎えたいところ。
ニバリはクラシックでの勝利まであと一歩に迫りながら勝ち切れずにおり、このレースで何とか勝利をつかみたい。
上りでのアタックはもちろん、最大の武器であるダウンヒルを効果的にこなすことができれば、優勝の可能性をグッと引き寄せることに。
直前のピエモンテを制し、優勝候補に名乗りを上げたのがウラン。
ロンバルディアでは2008年に3位に入り、相性の良さも味方するか。
スプリントでは分が悪いとはいえ、勝負どころでのアタックが炸裂することがあれば数秒差での逃げ切りもありそう。
今年はミラノ~サンレモ、GPケベックといったワンデーレースに強さを発揮するゲランスもゴール勝負になると有利。
また、今シーズン一皮むけた印象のコスタも持ち前の独走力でヴェルガノからの逃げ切りを決める可能性を持つ1人。
昨年、劇的な逃げ切り勝利を飾り、今回2連覇のかかるザウグの走りにも期待したいところ。
日本人選手は別府選手が唯一の出場。
ゲランス、アルバジーニといったエースを支える立場として重要な役割を与えられることになるでしょう。
展開によっては逃げやアタックで目立つ働きが見られるかもしれません。
【優勝予想】
各選手のコース適性やコンディション、個人的な希望的観測も込みで予想をすると、
★★★
フィリップ・ジルベール
★★
リゴベルト・ウラン、サイモン・ゲランス
★
アルベルト・コンタドール、ヴィンチェンツォ・ニバリ、ルイ・コスタ
と見ています。
もう個人的な希望を言ってしまうと、アルカンシェルジルベールに勝ってもらって、「あぁやっぱりジルベールはアルカンシェルなだけあるな、さすがだな!」と言わせてほしいなぁ、と思っていたりするのです(笑)。
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ジロ・ディ・ロンバルディアオフィシャルサイト
http://www.gazzetta.it/Speciali/GiroLombardia/it/