【序】
2012年、日本では「ガールズケイリン」がスタートし、海外ではロンドンオリンピックが開催。
特にロンドンオリンピックの自転車競技では、トラック種目においてクリス・ホイの史上最多となる6個目の金メダル獲得があり、また男子オムニアムでの最終1kmTTでの劇的な幕切れ、チームパシュートでのチームGBの驚異的世界記録など、これまでにない盛り上がりを見せた。
日本に目を戻すと、昨年オープンした伊豆ベロドロームが本格的に活用される年でもあった。
基本ロードをメインに、その他種目も幅広く観る私としては、相対的に見てトラック比重は高かった1年だったと思う。
感動することばかりではなく、競技としての内面的部分、本質的部分を大いに学ばせてもらったのが今年であった。
そんな“トラック充”の2012年を、自らの脚で締めくくることになろうとは想像していなかった。
11月末、自転車から仕事から、各方面でお世話になりっぱなしのCHULL氏からのメールがきっかけである。
チャレンジサイクルどうするで???
ん!? チャレンジサイクル!?
あぁ、徳島では選手登録者以外でもバンクを走ることにできるイベントがあったな、そういえば。
昨冬にこのイベントの話を聞いていて、「ぜひ来年は!」なんて元気に返事をしたような気がする。
高校新人戦、一般登録者部門、そして一般未登録者部門とがあって、一般は1kmTTへの出場が義務付けられているとの話だった。
まぁバンク走行を経験できるのならと、二つ返事で出場表明。
と、意思表示した時点で実は申込締切を過ぎてしまっていたという事実が判明。
徳島県自転車連盟の事務局であり、これまたいつもお世話になっているナカニシサイクルさんへ直接電話し参加申込。
JCF理事、また東四国国体では総務委員長を務めた御大である社長が出て、ちょっと緊張する。
未登録者は1kmTTともう1つ、参加任意の2kmインディビジュアルパシュートとが設けられているのだが、何故か話の流れで2種目出場になってしまう。
さぁどうしよう…。
かくして、2012年12月2日、私のトラックレース、いやサイクルレースそのものへのデビューを迎えることとなる。
【破】
数日前から天気と風が気になって仕方が無かった。
しばらく12月2日の天気は雨と予報されていたが、直前になって曇に変わった。
なんだかんだで晴れ。
ただ、寒い。
ただただ寒い。
会場である小松島競輪場へ到着し、挨拶回りなど一通り済ませ、プログラム開始まで解放されているバンクでウォーミングアップ。
というか、初のバンク走行である。
とりあえず思うがまま走る。
なかなかの走り心地であるが、いかんせんライダー自身の脚が無いときている。
早朝が苦手な私、ウォーミングアップで脚を攣りかけてしまうのである。
朝のうちはこどもたちのライドイベントで賑わっていた会場内。
こどもたちの楽しそうな様子に和みつつ、来る自分たちのタイミングまでコンセントレーションを高める。
プログラムが進み、周囲の動きを見つつ、自らもローラーで再度アップを開始。
まずは1kmTT、私は最終組での出走。
昨年までの結果から、おおよそのスタンダードは1分20~30秒と推定。
選手登録をしていない、ホビーライダーなら十分すぎるタイムだろう。
走ったことのない私からすれば勝手が分からないが、ひとまず1分20秒台を目標にしてみる。
1kmTTだけで各部門合わせて100人近い人数がエントリー。
全体の最終組である私にはなかなか出番が回ってこないのは致し方ない。
とにかく体を冷やさないように。
レースをする頃には天気も下り坂、体感温度も下がっている中で本番を迎えた。
名前が呼ばれた、いよいよである。
私はバックからのスタート、最初の200mが追い風だ。
さぁ行くぜっ!
PHOTO:チャリ氏
行けええええええ!!!!!
PHOTO:CHULL氏
いや、そりゃもうね、スタートしたら何でしょう、“いきものがかり”のブルーバードの歌詞のような気分ですよ。
飛翔(はばた)いたら 戻らないと言って
目指したのは 蒼い 蒼い あの空
何がってもう、スタートした瞬間の気持ちの良いこと。
まぁ言ってみれば、「ハイになっている」状態のことですよね。
こんなの久々の感覚。
最初の200mは体感したことのないスピード感。
しかし、しかしである。
1周回終わる頃に異変に気付く。
お尻が割れそう…。
そこからはご覧の通りである。
負のオーラが…
PHOTO:チャリ氏
後ろ姿に哀愁漂う似非グリーンエッジ…
PHOTO:チャリ氏
フィリップ・ジルベールよろしく、“黄金のタレ”の発動を決めてしまった。
初挑戦だったとはいえ、完全な失敗レースであったことはすぐに認識できた。
ゴール後はローラーで軽くダウンして、もらったパンを補給食に反省会。
改めて走り方のアドバイスをみなさんからもらう。
どうやら私は最初の200mをフルスロットルに限りなく近い状態で行ってしまったらしい。
入り200mで乗せて、あとは極力キープ、そこに近付けることは遥か遠く…。
もう情けないったらない。
後からサイコンを見たら、最初の200mを47km/hで入り、最後は33km/hまで落ちてしまっていた…。
1つ言い訳させてもらえるならば、瞬発性の太い筋肉が私にはかなり少なく、1kmTTは最も苦手とする部類であるということ。
でも、やっぱりやる以上は結果を残したい。
学ぶこと、そして反省することの多いバンク2周半であった。
そしてもう1種目、2kmIPに向けて補給を摂り、身体を休めて多少回復。
雨が本降りとなり、2種目エントリー組が続々と2kmIPをDNSにして退散しているではないか!
我も帰りたいぞよ…とは思ったものの、「みんな帰った分、上位狙えるんじゃね!?」と私お得意の不純な動機の発動である。
上位に入ったところで別に表彰されるでもないのだけれど、まぁネタにはなるだろうと前向きに(!?)参戦を決意。
再度アップして本番に備える。
DNSが予想以上に多く、思いのほか早く出番が回ってくる。
こちらも最終組での出走。
徳島の“ジャック・ボブリッジ”見参!
PHOTO:チャリ氏
こちらに関しては、先の反省を踏まえて突っ込みすぎないこと、トラック5周を極力キープして走ること、最終盤は踏み直す感覚で、をテーマに。
1kmTTの疲れを感じながらの走り、「IPだけに集中できたら…」という思いも正直あるが、やれることはやったつもり。
35km/h前後を何とかキープしてゴール。
正式タイムは、3’26″17。
【急】
本業の締切が押し迫っていた時期で、直後はすぐに切り替えることができたものの、時間が経つにつれて自分の弱さに嘆くことに。
山ならもっといけるのだけれど…とつい思ったりしてしまうが、そもそもの要素が異なるだけに、そんなこと思っても仕方がない。
それより何より、せっかくトライしているのだから、やっぱりもっと良いタイムを出してみたい!
写真で見ても分かるのですが、私は線が細すぎる!
普段ロードで乗る分にはこれで良いくらいですが(実はもっと絞りたいくらい)、トラックやる時はもっと太い筋肉を付けなければいけないですねぇ…。
日頃のライドなどでも、もう少し瞬発性のある動きを入れて、使う筋肉の幅を広げる必要がありそうです。
ということで、やりますかね、肉体改造!
来年のチャレンジサイクルの頃には、私の身体がロベルト・フォルストマンみたいになっていても驚かないでくださいね!
まずは来年に向けて、1kmTTは1分20秒台、2kmIPは3分10秒台に目標を設定してみたいと思います。
最後に、大会運営に携わっていたスタッフのみなさま、私のようなヘボライダーの相手をしてくださり、レースでは応援までしてくださったみなさま、本当にありがとうございました。
気持ち良く走ることができました。
前記の通り、来年はもう少し強くなれていたら良いなぁと思っておりますので、今後も懲りずによろしくお願いします!
徳島県自転車競技連盟 http://www.tokushima-cf.org/