2012年のロード世界選手権最後の種目となった男子エリート・ロードレース。

アムステル・ゴールドレースでおなじみのカウベルグを舞台に、まさに力と力のぶつかり合いと言える名勝負となりました。

選手の実力がそのまま反映されたレースを振り返ってみたいと思います。

 

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UCIロード世界選手権・男子エリート ロードレース(Maastricht~Valkenburg、267.0km)-9月23日

 

【結果】

1.フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ) 6:10:41

2.エドヴァルド・ボアッソン・ハーゲン(ノルウェー、SKY) +04″

3.アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +05″

4.ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) +05″

5.ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) +05″

6.アラン・デイヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +05″

7.トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) +05″

8.ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・シャープ) +05″

9.セルジオ・ルイス・エナオ(コロンビア、SKY) +05″

10.オスカル・フレイレ(スペイン、カチューシャ) +05″

 

フルリザルト(公式サイト)

※優勝者名クリックでUCIリリースの優勝者プロフィールへ(pdf)

 

レーススタートからアタックの応酬が続き、逃げがなかなか決まらない中、ようやくエスケープを成功させたのは11人。

逃げの容認後は、イギリスがコントロール。

特に、ディフェンディングチャンピオンのカヴェンディッシュは今回アシストに回り、レース距離が100kmを超えて周回コース入り後もしばらく集団を牽引する走り。

 

逃げとメイン集団との差が詰まりつつある状況で、フレチャのアタックをきっかけに有力チームがほぼすべて乗る追走集団が形成され、その中には別府選手の姿も。

難なく逃げ11人に追い付き、総勢20人の先頭集団ができ上がります。

さらに4周目にはコンタドールがアタック、これにヴォクレールやティーナンロック、ヘーシンクがらも加わり、一挙29人のグループがメイン集団に対し先行します。

この先行グループにベルギーはメールスマンを送り込んだものの、ファンスーメレンらがメイン集団のコントロールを開始し、そこにイギリスやドイツなどのアシストが数人加わって牽引。

ゴールまで30kmを前に先行する選手たちを吸収し、レースはいよいよ勝負どころを迎えることになります。

 

残り2周に入ってのタランスキーとスタナードのアタックで集団のスピードも活性化。

スピードに対応できない選手たちが上りで遅れ、集団の人数を徐々に減らしながらレースは最後の1周へ。

 

各チームのトレイン形成とそのポジション争いは、さながらスプリント前のよう。

残り5kmを切ってパオリーニの強力な牽引を開始し、先頭イタリア、ベルギーがそれに続くような格好で最後のカウベルグへ。

 

カウベルグの上りで最初にアタックしたのはニバリ。

その後ろにはボーネンのポジションを確保するためベルギーのアシストが続き、若干後方からカウベルグに突入したジルベールが少しずつ前方へ。

そして、ボーネンやアシストの動きを確認したジルベールが満を持してアタック。

この強力かつ決定的なアタックに対応できる選手はおらず、コロブネフやボアッソン・ハーゲン、バルベルデが追走を試みるも牽制してしまい、ジルベールとの差は開く一方。

 

残り約2kmを独走に持ち込んだジルベールは表情を苦痛にゆがめながらも激走。

ゴール前400mで後ろとの差を確認すると勝利を確信しガッツポーズ。

何度も歓声に応えながらのウイニングラン、そして初のアルカンシェルゲットとなる勝利のゴール。

これまで幾度となくチャレンジしながら跳ね返されてきたアルカンシェル獲得へのチャレンジ、今回は完全な力技でモノにしました。

 

2位争いは牽制する集団から隙を突いて飛び出したボアッソン・ハーゲンが、独走力を活かして逃げ切り。

それを追ったバルベルデが1秒差で3位。

バルベルデと同タイムとなったメイン集団の先頭は、スプリンターのデゲンコルブが取り、29位までが同タイムとなっています。

 

 

 

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【戦評】

有力国の多くがパンチャー、スプリンターと勝負できる選手を複数揃えて臨んだ中、結果的に選手の力の差でレースが決まった印象。

ひいては、それら着に絡んだ選手の力を最後の局面で発揮できるようお膳立てした各チームの戦力の差が出たとも言えると思います。

 

このレースに完璧なまでに合わせたジルベールは、シーズン前半の不調により方針転換したのが奏功。

世界選手権に合わせるため、ツールでのアシスト役を過程にブエルタで最終調整、そしてここ一番での勝利に結びつけました。

ベルギーチームとしては、積極的にレースを動かそうと試みたライバルチームの動きにあえて反応せず、それでいながら上手く全体をコントロールしたと言えそう。

中盤でのスペインの動きに“捨て駒”であるメールスマンをひとまず乗せておきながら、メイン集団ではファンスーメレンが牽引役を担い終盤に備える作戦がハマりました。

最終盤では複数のアシストを残す数的優位に持ち込み、ボーネンを好位置に置いていつでも勝負できる体勢を整えたうえで、ジルベールが自分のタイミングで行く、ベルギーチームにとっては王道の勝ち方。

 

ジルベールのパワーに屈したとはいえ、ボアッソン・ハーゲンもここ最近見せてきた得意のパターンに持ち込んだ結果の銀メダル。

チームの人数が少ない不利な状況もあり、有力国の動きに合わせながらのレースが却って無駄な動きを省いて、最後のカウベルグからの勝負に持ち込めたのは大きかったでしょう。

また、2位争いに牽制が入り、一度集団につかまりながらも再度ロングスプリントで2位を死守した辺りも彼ならでは。

スプリント、上り、そして強力なアタックとワンデーレースに必要な要素をほぼすべて持ち合わせる選手として、今後に大きな可能性を見せた2位でした。

 

レース全体を通して最も動きを見せていたスペインは、バルベルデをエースに立てて銅メダルと最低限の結果。

中盤から後半にかけフレチャとコンタドールが先頭集団に入り、他チームの働きを促すまでは完璧に近かったものの、最後はやはりベルギーのチーム力には勝てず。

また、バルベルデとフレイレとの間に連係ミスがあったと言われており、もしかすると最後の最後にきてチームとしての動きを欠いた可能性も否めません。

しかし、結果を残すべき選手、働く選手とほぼ全員が役割通りに走り、得た結果としては良かったと言えるでしょう。

 

地元オランダは圧倒的なパンチ力を持つ選手やスプリンターを欠きながらも、ボームが大健闘の5位。

ここ数年では戦力的に劣るかと見られたオーストラリアも、デイヴィスが6位に入り、まずまずの結果に。

後半にかけてレースをコントロールし、デゲンコルブでの勝負に賭けたドイツはスプリント以外のオプションが無かったことが響いた格好。

 

個人としてはナヴァルダスカスが8位と数的不利をものともせず、リザルトを残したのは大いに評価できるでしょう。

レースの大部分をコントロールしたイギリスは最終的に上位に入ることはなかったものの、エースに大抜擢されたティーナンロックがワールドクラスのライダーに交じって19位と健闘。

SKY入りする来年以降への足がかりとしては好結果。

 

逆に、イタリアはまたしても結果を残すことができず。

戦力こそ充実していたものの、最後のカウベルグでアシストに解き放たれたニバリが不発。

結局、集団に残っていたガットが11位に入るのが精一杯。

個々の実力は高いものがあるとはいえ、一発に長けた選手やスプリント力の高い選手をメンバーに入れられない部分が他の後塵を拝する要因かもしれません。

 

過去最大の6名で臨んだ日本チームも残念な結果に終わりました。

落車やトラブルが相次ぎ、最後の1周までメイン集団に残っていた宮澤選手が唯一完走し54位。

数的な優位を全く活かせなかった点では、惨敗と言えるでしょう。

後方で落車にたびたび巻き込まれ、集団内でのポジショニングが大きな要因となってしまった感。

また、選手個々のコンディショニングや、レース中のトラブル対応にも問題視される部分があったことも事実。

やはり一発勝負で、世界の一線級だけが揃うレースにおいては、トラブルやその対応など1つとってもそれがすべて各選手の実力と捉えられるだけに、今後の戦い方にどのようにつなげるかがポイントとなってくるでしょう。

有力国も大なり小なりトラブルがある中で、しっかりとリザルトを残している辺りは見習う必要がありそうです。

 

来年のロード世界選手権は、9月22日から29日までの日程でイタリア・フィレンツェで開催予定。

今年以上の盛り上がりを、そして我らが日本チームには今年のリベンジを果たす活躍に今から期待したいところです。

 

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UCIオフィシャルサイト内世界選手権ページ

http://www.uci.ch/templates/UCI/UCI3/layout.asp?MenuId=MTYzNDI&LangId=1

UCIロード世界選手権オフィシャルサイト

http://www.limburg2012.nl

 

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